- 作者
- ベノッツォ・ゴッツォーリ
- 制作
- 1459~1462年
- 媒材
- フレスコ画
- 所蔵
- メディチ宮殿マギ礼拝堂
概要
「東方三博士の旅」は、ベノッツォ・ゴッツォーリ作の絵画、壁画。
メディチ宮殿の圧巻は、ベノッツォ・ゴッツォーリが制作した「東方三博士の旅」である。彼はこの大作を仕上げる前に、サン・マルコ修道院の僧室装飾をフラ・アンジェリコのもとで手がけており、その才能が認められ大抜擢される。この部屋はメディチ家の私的な礼拝堂として制作されたが、ミラノ公ガレアッツォ・マリーア・スフォルツァのような賓客を迎えることもあった。
このフレスコは2つの要素が交錯する構造となっている。つまり「東方三博士の旅」という主題を土台に、その当時のメディチ家の人々を交えた、フィレンツェ公会議の要人たちが描かれている。フィレンツェ公会議はフィレンツェで1439年から開催され、ギリシア正教側の要請で、コジモ・イル・ヴェッキオが出資したもので、2つの教会の教義を統一するという宗教上の目的と、オスマン・トルコに脅かされるギリシア正教側が、西側に助けを求めていたことから実現された。
東面
カスパール/ロレンツォ・イル・マニーフィコ
中央祭壇に向かって右側は三博士の1人、カスパールが白馬に跨っている。これは理想化されたロレンツォ・イル・マニーフィコの肖像とされている。
ピエロ・イル・ゴットーソ
カスパールの後ろに付き従っているのは、白馬の赤い帽子の男が、おそらくはピエロ・イル・ゴットーソ。
コジモ・イル・ヴェッキオとピエロ・イル・ゴットーソ
ピエロ・イル・ゴットーソの後ろで驢馬に乗っているのがコジモ・イル・ヴェッキオ。
シジスモンド・マラテスタとガレアッツォ・マリーア・スフォルツァ
さらに後ろで馬の頭をこちらに向けている2人は、右がミラノ公ガレアッツォ・マリーア・スフォルツァ、左がリーミニ領主シジスモンド・マラテスタと言われる。
シジスモンド・マラテスタ
ロレンツォ・イル・マニーフィコ
これらの人々の上方には、ピラミッド状に群衆が表現されている。1列目は馬の頭が描かれている。すぐその上に並ぶ人々の中で、左から6番目の鼻の曲がった男が、本当のロレンツォ・イル・マニーフィコの肖像。
ベノッツォ・ゴッツォーリ
ロレンツォ・イル・マニーフィコのすぐ上で目線をこちらに向けているのが、作者のベノッツォ・ゴッツォーリ。赤い帽子の縁に金色の文字でOpus Benotiiと書かれている。
南面
バルタザール/ヨハネス8世・パレオロゴス
祭壇に向かい合った壁には、三博士の1人、バルタザールが白馬に乗っている。これは公会議のためにフィレンツェを訪れた、ビザンチン皇帝ヨハネス8世・パレオロゴスの肖像。
マリーア・デ・メディチとビアンカ・デ・メディチとナンニーナ・デ・メ
ディチ
壁の左端の、馬に乗った3人の女性は、マリーア・デ・メディチ、ビアンカ・デ・メディチ、ナンニーナ・デ・メディチといって、ロレンツォ・イル・マニーフィコの姉妹。背景にはメディチ家の由来するムジェッロの風景が描かれている。
西面
メルキオール/ジュリアーノ・デ・メディチ
祭壇に向かって左側にはチーターと一緒に馬に乗る、もう1人の博士、メルキオールの姿。これはロレンツォ・イル・マニーフィコの弟ジュリアーノ・デ・メディチとされている。
ベノッツォ・ゴッツォーリ
メルキオールの右上の群衆の中にも、ベノッツォ・ゴッツォーリが2回姿を現している。右から4番目のターバン姿の男と、その左上でこちらを見ている、黒い東洋風の帽子を被った男である。
ロベルト・マルテッリ
フランチェスコ・サッセッティ
フィラレテ
アンジェロ・ターニ
ネリ・カッポーニ
コンスタンティノープル総主教ヨセフ
この後ろにいる驢馬に跨った老人は、コンスタンティノープル総主教ヨセフ。フィレンツェ公会議は1439年2月、3月とサンタ・マリア・ノヴェッラ教会で行われたが、1439年6月10日に総主教が長旅の疲れと、連日の激務のために急死してしまう。亡骸はサンタ・マリア・ノヴェッラ教会の主祭壇に向かって右の袖廊に埋葬された。墓には半円のアーチの中に、フレスコ画で白いひげの老人と、2人の天使が描かれている。
分断された左側
マギ礼拝堂の入口は、後にメディチ宮殿の所有者になるリッカルディ家がつけたものである。このおかげで壁画の一部が壊されてしまい、コンスタンティノープル総主教ヨセフの驢馬が切れている。この切られた驢馬のお尻の部分はそのまま入口の左側面につけられ、現存しない入口の正面の部分には周りのフレスコ画に似せた間に合わせの絵が描かれた。
題材
東面
コジモ・イル・ヴェッキオ
ピエロ・イル・ゴットーソ
ロレンツォ・イル・マニーフィコ
ガレアッツォ・マリーア・スフォルツァ
シジスモンド・マラテスタ
ベノッツォ・ゴッツォーリ
南面
ヨハネス8世・パレオロゴス
マリーア・デ・メディチ
ビアンカ・デ・メディチ
ナンニーナ・デ・メディチ
西面
ジュリアーノ・デ・メディチ
ロベルト・マルテッリ
フランチェスコ・サッセッティ
フィラレテ
アンジェロ・ターニ
ネリ・カッポーニ
コンスタンティノープル総主教ヨセフ
別表記
三賢王の行列、東方三博士の礼拝、東方三博士の騎馬行列
外部リンク
Bisanzio
Museo Benozzo Gozzoli
The Museums of Florence
Web Gallery of Art
Wikipedia
参考文献
『世界の歴史16 ルネサンスと地中海』
『メディチ家』
『ルネサンス宮廷大全』
記載日
2006年7月13日以前