- 生没
- 1449年~1494年1月11日
- 出身
- フィレンツェ
- 没地
- フィレンツェ
- 父
- トンマーゾ・ビゴルディ
- 子
- リドルフォ・デル・ギルランダイオ
- 師匠
- アレッソ・バルドヴィネッティ
- 弟子
- ミケランジェロ
概要
ドメニコ・ギルランダイオは、15世紀のイタリアの男性、画家。
1449年、金銀細工師の子としてフィレンツェに生まれた。この時代の偉大な画家によくあるように、当初は父親のもとで金銀細工を学んだが、やがて画家に転向する。
彼が画家として最初に注目を集めるきっかけとなった壁画はサンタ・クローチェ聖堂の中にあったようだが、残念ながら現存しない。しかし、初期の作品のうちの1つであるオニサンティ聖堂内のヴェスプッチ礼拝堂の壁画「慈愛の聖母」などからは、ドメニコ・ヴェネツィアーノやアンドレア・デル・カスターニョなどの画家たち、そして写実を得意とするフランドル絵画の影響が認められる。
1473年から1475年にかけては、サン・ジミニャーノ大聖堂のサンタ・フィーナ礼拝堂に聖女フィーナの物語を描き、ついでローマのヴァティカン図書館で壁画制作をするなど、トントン拍子に実力を認められ、次々に作品を制作していく。
オニサンティ聖堂ではボッティチェッリの「書斎の聖アウグスティヌス」との競作で「書斎の聖ヒエロニムス」を描く。これらの両作品は現在、同聖堂内で向かい合って展示されており、二人の画家の特徴を比較して観ることができ、興味深い。人物の内面を表す表情の深さや男性的な表現などではボッティチェッリの聖アウグスティヌスには一歩譲っている感は否めないが、聖ヒエロニムスの机の周りのさまざまな品々の写実的表現からは、ギルランダイオの才能が確かなものと窺える。
その後、教皇シクストゥス4世に招聘されてヴァチカンのシスティーナ礼拝堂の両壁の窓の下に壁画の連作を描く。システィーナ礼拝堂といえばミケランジェロの天井画と壁画につい目を奪われがちだが、ボッティチェッリ、ペルジーノらと共に携わったこの壁画制作は、1480年代初頭のイタリアにおいては最も重要な仕事であった。
1482年にフィレンツェに戻ったギルランダイオは、フィレンツェ政庁からの依頼のヴェッキオ宮の百合の間の装飾、サンタ・トリニタ聖堂内サセッティ礼拝堂の「聖フランチェスコの生涯」の壁画と「キリスト降誕」の祭壇画、サンタ・マリア・ノヴェッラ教会内陣の連作壁画、捨て子養育院の「東方三博士の礼拝」などなど、休む間もなく重要な壁画や多数の板絵を制作した。
壁画制作と並行して祭壇画の制作から燭台の塗装といった細かい仕事まで、さまざまな注文を引き受けていた事実は、ギルランダイオの芸術家としての高い評判を示すとともに、かなり大規模な工房を持ち、工房全体で仕事をこなしていたことが想像される。若き日のミケランジェロもギルランダイオの工房に弟子入りしている。
ギルランダイオは1494年にペストによって亡くなった。遺体はサンタ・マリア・ノヴェッラ教会に埋葬された。
ギルランダイオが扱う主題は「最後の晩餐」や「キリスト降誕」「聖母マリアの生涯」「洗礼者ヨハネの生涯」など、宗教画である。しかし、それらの作品では本来は付随的なはずの背景に、当時のフィレンツェの街の様子や主だった人々、上流階級の日常の暮らしぶりが描かれている。
制作当時の街の情景や有力者の姿を描きこむことは特に新しいことではなく、多数の画家がすでに行っている。しかし、ギルランダイオの場合は宗教的主題はほとんど口実にすぎず、当時のフィレンツェ文化を代表する人々を描き出したことに大きな特徴がある。つまり宗教画の形を借りて、巧みな写実表現を駆使してフィレンツェ上流階級の集団肖像画を描いたのである。
万人が分かり易いと感じる親しみやすさ、そして15世紀のフィレンツェの風俗が手に取るように観ることができるという、まさに「宗教的風俗画」であることがギルランダイオの作品の特徴であり、彼の作品の魅力である。
そしてこのようなギルランダイオの作品を今でもフィレンツェで多数鑑賞できるということは、彼の作風が当時の人々にも実際に受け入れられたということを明確に示しているのではないかと思うのである。
作品
年表
1449年
フィレンツェに生。
1481年夏
この頃?、完成したシスティーナ礼拝堂の壁画製作の契約をシクストゥス4世と結ぶ。他に、ボッティチェッリ、コジモ・ロッセッリ、ルカ・シニョレッリ、ピントゥリッキオら。
1488年4月1日
ミケランジェロが門に入る。
1489年1月初め
この頃ミケランジェロが門を去る。
1494年1月11日
フィレンツェで死。
住居
中央マーケットに沿ったVia dell'Arintoのどこか。父トンマーゾ・ディ・クッラード・ビゴルディが、ここに開いた工房で金銀細工で作った花飾り(Ghirlanda)を流行らせたため、一家はこの名で呼ばれるようになった。
聖女バルバラと二聖人 Santi Girolamo, Barbara e Antonio Abate
- 作者
- ドメニコ・ギルランダイオ
- 制作
- 1471~1472年頃
- 媒材
- フレスコ画
- 所蔵
- サンタンドレア・ア・チェルチーナ教区教会
概要
「聖女バルバラと二聖人」は、ドメニコ・ギルランダイオ作の絵画、壁画。
バルバラ
ヒエロニムス
聖アントニウス
題材
外部リンク
聖バルバラ
- 作者
- ドメニコ・ギルランダイオ
- 制作
- 1473年頃
- 媒材
- 板
- 寸法
- 縦68 cm×横47 cm
- 所蔵
- 個人
概要
「聖バルバラ」は、ドメニコ・ギルランダイオ作の絵画。
題材
別表記
St Barbara Crushing her Infidel Father, with a Kneeling Donor
外部リンク
キリストの洗礼 Battesimo di Cristo
- 作者
- ドメニコ・ギルランダイオ
- 制作
- 1473年頃
- 媒材
- フレスコ画
- 所蔵
- Chiesa di Sant'Andrea a Brozzi, San Donnino
概要
「キリストの洗礼」は、ドメニコ・ギルランダイオ作の絵画。
題材
別表記
Baptism of Christ
外部リンク
ルクレツィア・トルナブオーニの肖像 Ritratto di Lucrezia Tornabuoni
- 作者
- ドメニコ・ギルランダイオ
- 制作
- 1475年頃
- 媒材
- テンペラ、油彩、ポプラの板
- 寸法
- 縦53.3 cm×横39.9 cm
- 所蔵
- ナショナル・ギャラリー・ワシントン
概要
「ルクレツィア・トルナブオーニの肖像」は、ドメニコ・ギルランダイオ作の絵画、肖像画。
題材
公式サイト
外部リンク
聖者たちと玉座の聖母子 Madonna col Bambino in Trono, Angeli e Santi
- 作者
- ドメニコ・ギルランダイオ
- 制作
- 1483年頃
- 媒材
- テンペラ、板
- 寸法
- 191 × 200 cm
- 所蔵
- ウフィッツィ美術館
概要
「聖者たちと玉座の聖母子」は、ドメニコ・ギルランダイオ作の絵画。
別表記
Madonna and Child Enthroned with Saints
題材
外部リンク
東方三博士の礼拝 Adorazione dei Magi degli Innocenti
- 作者
- ドメニコ・ギルランダイオ
- 制作
- 1485~1488年
- 媒材
- テンペラ、板
- 寸法
- 縦285 cm×横243 cm
- 所蔵
- 捨て子養育院
概要
「東方三博士の礼拝」は、ドメニコ・ギルランダイオ作の絵画。美しい色彩と人々の写実的な表情が印象深い、祭壇画である。
題材
別表記
三王礼拝
外部リンク
聖母マリアの生涯 Storie di Maria
- 作者
- ドメニコ・ギルランダイオ
- 制作
- 1486~1490年
- 媒材
- フレスコ画
- 所蔵
- サンタ・マリア・ノヴェッラ教会トルナブオーニ礼拝堂
概要
「聖母マリアの生涯」は、ドメニコ・ギルランダイオ作の絵画、壁画。注文主はジョヴァンニ・トルナブオーニ。
■1、神殿から追い出される聖ヨアヒム
■2、聖母マリアの誕生
■3、マリアの宮参り
■4、聖母マリアの婚約
■6、三王礼拝
■7、ヘロデの嬰児虐殺
■8、聖母被昇天
題材
英語
The life of the Blessed Virgin
外部リンク
聖母マリアの誕生 Natività della Vergine
- 作者
- ドメニコ・ギルランダイオ
- 制作
- 1486~1490年
- 媒材
- フレスコ画
- 所蔵
- サンタ・マリア・ノヴェッラ教会トルナブオーニ礼拝堂
概要
「聖母マリアの誕生」は、壁画「聖母マリアの生涯」の1作品。
題材
外部リンク
洗礼者ヨハネの生涯 Storie di San Giovanni Battista
- 作者
- ドメニコ・ギルランダイオ
- 制作
- 1486~1490年
- 媒材
- フレスコ画
- 所蔵
- サンタ・マリア・ノヴェッラ教会トルナブオーニ礼拝堂
概要
「洗礼者ヨハネの生涯」は、ドメニコ・ギルランダイオ作の絵画、壁画。
■1、ヨハネの誕生をザカリアに伝える天使
■2、聖母マリアのエリザベト訪問
■3、ヨハネの誕生
■4、ザカリアによるヨハネの命名
■6、ヨハネの説教
■7、キリストの洗礼
■8、ヘロデの饗宴
題材
別表記
洗礼者ヨハネ伝
外部リンク
ヨハネの誕生をザカリアに伝える天使 Apparizione dell'Angelo a Zaccaria
- 作者
- ドメニコ・ギルランダイオ
- 制作
- 1486~1490年
- 媒材
- フレスコ画
- 所蔵
- サンタ・マリア・ノヴェッラ教会トルナブオーニ礼拝堂
概要
「ヨハネの誕生をザカリアに伝える天使」は、壁画「洗礼者ヨハネの生涯」の1作品。
左からマルシリオ・フィチーノ、クリストフォロ・ランディーノ、アンジェロ・ポリツィアーノ、デメトリオ・カルコンディラス。
題材
アンジェロ・ポリツィアーノ
クリストフォロ・ランディーノ
デメトリオ・カルコンディラス
マルシリオ・フィチーノ
洗礼者ヨハネ
ジョヴァンナ・トルナブオーニの肖像 Ritratto di Giovanna Tornabuoni
- 作者
- ドメニコ・ギルランダイオ
- 制作
- 1488年
- 媒材
- テンペラ、板
- 寸法
- 76 × 50 cm
- 所蔵
- マドリッド・ティッセンコレクション
概要
「ジョヴァンナ・トルナブオーニの肖像」は、ドメニコ・ギルランダイオ作の絵画、肖像画。
銘
O arte, se tu fossi capace di dipingere i costumi e l'anima, nessun quadro sarebbe più bello sulla terra
ああ、芸術よ。もしもお前が彼女の特性や内面性を再現することができるなら、この世にこれに勝る絵画はないだろう
題材
別表記
Portrait of Giovanna Tornabuoni
外部リンク
女性の肖像 Ritratto di donna
- 作者
- ドメニコ・ギルランダイオ
- 制作
- 1490年頃
- 媒材
- テンペラ、板
- 寸法
- 縦48.9 cm×横36.8 cm
- 所蔵
- ハンティントン・ライブラリー
概要
「女性の肖像」は、ドメニコ・ギルランダイオ作の絵画、肖像画。
題材
別表記
Portrait of a Woman
公式サイト
外部リンク
Wikimedia Commons
Google Books
男性の肖像 Ritratto d'uomo
- 作者
- ドメニコ・ギルランダイオ
- 制作
- 1490年頃
- 媒材
- テンペラ、板
- 寸法
- 縦48.9 cm×横36.8 cm
- 所蔵
- ハンティントン・ライブラリー
概要
「男性の肖像」は、ドメニコ・ギルランダイオ作の絵画、肖像画。
題材
別表記
Portrait of a Man
公式サイト
外部リンク
老人と少年 Vecchio e Nipote
- 作者
- ドメニコ・ギルランダイオ
- 制作
- 1490年頃
- 媒材
- テンペラ、板
- 寸法
- 62 × 46 cm
- 所蔵
- ルーヴル美術館
概要
「老人と少年」は、ドメニコ・ギルランダイオ作の絵画。
外部リンク
クラリーチェ・オルシーニの肖像 Ritratto di Clarice Orsini
- 作者
- ドメニコ・ギルランダイオ
- 制作
- 1494年
- 媒材
- 油彩、板
- 寸法
- 横52 cm、縦75 cm
- 所蔵
- ナショナル・ギャラリー・アイルランド
概要
「クラリーチェ・オルシーニの肖像」は、ドメニコ・ギルランダイオ作の絵画、肖像画。
題材
外部リンク
聖ウィンケンティウス・フェレリウス祭壇画 Pala di San Vincenzo Ferrer
- 作者
- ドメニコ・ギルランダイオと工房
- 制作
- 1493~1496年
- 媒材
- テンペラ、板
- 寸法
- 縦200 cm×横232 cm
- 所蔵
- リーミニ市立美術館
概要
「聖ウィンケンティウス・フェレリウス祭壇画」は、ドメニコ・ギルランダイオと彼の弟子作の絵画、祭壇画。上部に父なる神が、中央に聖セバスティアヌス、聖ヴィンチェンツォ・フェッレーリ、聖ロクスに向かって拝むマラテスタ家の面々が、下部に聖ヴィンチェンツォ・フェッレーリが行った3つの奇跡が描かれている。
ヴィオランテ・ベンティヴォーリオ
パンドルフォ4世・マラテスタ
カルロ・マラテスタ
別表記
San Vincenzo Ferrari fra san Sebastiano e san Rocco, venerati dai Malatesti
公式サイト
外部リンク
本名
ドメニコ・ディ・トマソ・ビゴルディ(Domenico di Tommaso Bigordi)
外部リンク
アーティストリアン
ウィキペディア
東京富士美術館
宮城徳也研究室 フィレンツェだより
Art cyclopedia
Ibiblio
Web Gallery of Art
参考文献
『世界大百科事典』
『世界の歴史16 ルネサンスと地中海』
『逆光のメディチ』
『ボルジア家――悪徳と策謀の一族』
『メディチ家』
『読む年表・年譜 ルネサンス・フィレンツェ、イタリア、ヨーロッパ』
『ルネサンスとは何であったか』
『ルネサンスの女たち』
『ルネサンス百科事典』
『ロレンツォ・デ・メディチ暗殺』
『The Life of Cesare Borgia』
記載日
2005年5月29日以前
更新日
2021年7月15日